蕾の育ち方

 3月の終わりの頃に、少し肌寒い日が続いたせいか、今年は早咲きだった桜も、4月に入っても散らずに残ってくれた。おかげで、満開の桜の中で、年度初日の「なかよし会」(新入園家庭の歓迎会)を迎えた。

 桜の開花は、冬のしっかりとした寒さを越えることで、そのスイッチが入ると聞いた。しかし、この地球規模の温暖化が進むと、そのスイッチが入り難くなる。南へ下るほどその傾向が強くなるので、どんどんと開花が遅くなっていく。その結果、なんと北の寒い地方の方が、桜の開花が早まる可能性があるというのだ。

 北上する桜前線という言葉も、いつかなくなってしまうのかもしれない。

 蕾の時期の重要性というのは、実は人間も変わらないというのが、生命の不思議なところ。一見、静的にも見えるこの乳幼児期を、しっかりと遊び込んでいくことが、この後の開花のスイッチを入れていく。無理やり周囲を暖めて、開花を急かすほど、それは遅くなるのかもしれない。

 …というような内容を、このコロナ禍で、短縮コンパクトに開催した先の会の中で、少し時間を気にしながら、これまたギュッとコンパクトにお話をした。

 そして、この満開の桜に乗じて、先日、子育て広場「いずみ」で、「さくらフェスタ」と銘打った、ちょっとしたイベントを開催した。

 何と言っても換気と通気、窓という窓を開け放ち、半ば外ですか?というくらいを目指したので、当日の快晴にまず胸を撫で下ろす。
 子育てを通して、多世代が関わり合う場を目指す「いずみ」。他機関や他団体の協力を得て、高齢者の方にもホスト役を担ってもらったり、立ち寄りやすいコーナーやブースを設定したりと、少し様子を伺いながら、そぉっと仕立ててみた。

 向かいの小学校入学式への参列を終え、急いで駆けつけてみると、思いの外の盛況ぶり。前の歩道を覆う満開の桜と相まって、その賑わいが実に眩しかった。
 この地域の福祉に関わる人たちとのささやかな繋がり…傍で、そうした蕾も膨らんでいたことを、あらためて知ったのだった。

 そのブースの中で、大妻女子大の学生が、バルーンで動物などを作って、子どもたちに手渡してくれていた。
 その前には、少しめかし込んだ、見覚えのある子どもたち…それは、ちょうど入学式を終えた卒園児たちだった。中には、「もう僕は、そういうのはいいんだ。」と、なぜか1日にして先輩へと変貌を遂げた、スーパー一年生もいた。

 ちょうどこの日が、地域の小学校の入学式と重なることも、実は計算に入っていたことを、イベントを企画した副園長から聞いたのは、後日のことだった。

 するとこの後、お昼頃になれば、入学式を終えた卒園児たちが、三々五々、ランドセルに背負われるように、その晴れ姿を見せに来てくれるのだろうか。呼び鈴の音に、幾度となく聞き耳を立ててみるのだが、今年はまだ、ひと家庭。

 聞けば、その家庭は都合が悪かったが、比較的職員たちが応対しやすい午睡時間に、みんなで待ち合わせているとのこと…園を知り尽くした皆さんの…手慣れたご配慮に…感謝。

 新入園児、進級園児、ついでに新一年生…たくさんの蕾たちに、エールを。

(園からの便り「ひぐらし」2022年4月号より)

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