簡単には生まれない

 「暑いね」が、ついつい口をついてしまう連日の猛暑。子どもたちも疲れが溜まってくるころだ。昨日に続き、氷遊びや七夕飾り作り、運動コーナーを用意して、室内やテラスで過ごした。

 テラスでは、ホースを引っ張ってきて、水をためながら氷で遊んでみた。タマゴ型の氷には恐竜の玩具が入っている。「恐竜の卵だ」と冷たいタマゴを手にとって上から見たり、下から見たり。氷に閉じ込められた恐竜を助け出そうと、手に力を込めてみるが、びくともしない。「でないよ」と氷の卵を揺らしたり、振ったり、色々と工夫している。

 冷たさに思わず手を離すと、タマゴはコロコロと転がっていき、ホースの水に当たった。ホースの水がかかった部分はボコボコした形を作りながら溶けていく。恐竜が少しだけ氷から顔をのぞかせた。

 「でてきたよ」「引っ張ろう」と指先に力を込めて、引っ張るが、恐竜はなかなか取れない。保育者が水を入れたボウルを置いておくと、タマゴをそこに入れてみる子もいた。少しずつ氷が溶けて、とうとう一匹の恐竜が生まれた。

 「氷が溶けて、恐竜も出てきたね」という保育者の言葉に、水が氷を溶かすことなんとなくわかり始めたようで、それからはホースの水を直接かけて見たり、ボウルの中で転がしたりと本格的に頑張り始めた。

 子どもたちは、氷はすぐに溶けてしまうイメージがあるようで、思うように溶けていかない氷にイライラする。それに我慢がならず、眉を吊り上げて「出てこないよ!」「早く出して!」と保育者に抗議する子もいる。

 「よく見てごらんよ、氷が溶けているんじゃない?」とのんびりとした保育者の言葉を受けて、あらためてタマゴを見つめる子どもたち。「ホントだ、ボコボコしてる」「変な形」「尻尾が出そうだ」とわずかな変化に気付き始め、それからは氷が溶けていく様子を真剣な眼差しで観察するようになっていった。

 子どもたちは遊びの中で、予想とは異なる状況や、結果を急ぐあまりイライラを募らせることがある。そしてそれを、大人や友だちにぶつけてしまうこともある。しかし全ては「〇〇したい」という意欲の表れ。そして、こうした思いを、繰り返し受け止めてもらうことで、自分の思いを整理できるようになる。

 「そろそろお部屋に入ろう」と呼びかけながら、ふと入り口を見ると、一列に並んで、順に足を洗う子どもたちの姿があった。「順番ね」などという保育者の言葉はいらない。『自分はその次に』『自分も後ろで』と、自ら考えるようになってきている。

 誰からも指示をされなくても、こんな風に自然に並ぶことができるのは、たっぷりと遊び、十分に気持ちが満たされているからこその行動だとは思う。まだいつもとは、いかないのかもしれないが、こういう場面に出会うたびに、嬉しくなる保育者だった。

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