食べていいよ

 テラスに出たところで、ザーッと雨が降ってきた。空が暗くなっていると思ってはいたが、こんなに早く本降りになるとは想定外だった。急遽、屋根のある通路にコンビカーや引きぐるまを運び込み、そこで遊ぶことにした。

 柵越しに、「雨が降っちゃったね。」と恨めしそうに空を見つめる保育者に、「シャボン玉できないよね。」とハールちゃん。自分の遊びたいことを、言葉ではっきりと伝えてきた。ちょうど、シャボン玉も用意しようかと考えていたところだったので、「シャボン玉?できるよ!やろう!」と声をかけると、パッと表情が明るくなった。

 準備をしていると、にじぐみの子どもたちも興味津々で集まってきた。まずは、容器と吹き口を配って、容器にシャボン液を入れる。ハールちゃんには少し多めに入れてみた。しっかりと遊び方がわかっているので、すぐにフーッと息を吹き、たくさんのシャボン玉を膨らませていた。

 その様子を見て、にじぐみの子どもたちも真似をするのだが、逆さに液につけていたり、容器を振って液がこぼれたりしている。そして、どんどんとシャボン玉を作り出しているハールちゃんを、羨ましげにじっと見つめている。

  時々、ハールちゃんの容器に、にじぐみの子が吹き口を入れようとしてくるが、「だめ」と言いながら、容器を動かして回避していた。ひとしきり遊ぶと満足したのか、「お部屋に入る!」と室内へ戻っていった。

 室内でも、ハールちゃんの周りには、にじぐみの子どもたちが集まっていた。ボールをアイスに見立てて遊ぶ様子にも興味津々。

 美味しそうなアイスに、つい手が伸びるにじぐみの子がいると、「だめ」と言いながら取られないようにと抱えこむ。お皿に並べたアイスにソースを回しかける様子は、保育者が見ても美味しそうだ。にじぐみの子の気持ちもよくわかる。「だめ」と言われても、全く動じずに見つめ続けていた。

 そんなことが何度か続いた時、ハールちゃんが「嫌な時は、だめって言えばいいんだよね?」と保育者に尋ねてきた。「そうだね、だけどきっと、にじぐみのお友だちはお姉ちゃんの作ったアイスすごいなぁ、いいなぁって思ったんじゃないかな?」と応えると、「ふーん」と少し考えるように動きを止め、「はい、あげるよ」とアイスを配り出したのだ。

 「はい!これは先生の。食べていいよ!」と私にも分けてくれ、「美味しい!ありがとう!」と声をかけると、嬉しそうに笑顔を見せながら、また新たなアイスを作り、振る舞っていた。

 同い年くらいの友だちとの関わりでは、もう少し強い口調になることもあるが、今日は違っていた。やはり年下の子には、別の接し方が必要なのではという思いが、心のどこかに湧いたのかもしれない。そうした、年下へ気遣いといった感情は、自然に備わっているものなのか、はたまた体験を通して知っていくことなのか。保育者の言葉に「ふーん」と少し動きを止めたあの時、一体どんなことを考えていたのかを知りたいと思う保育者だった。

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