タイトルの相談

 朝の会が始まる前、少し頬を膨らませた彩瑛ちゃんから、「ほら!ネズミの!」とビニール袋を渡された。中には入っていた、画用紙や折り紙で作ったネズミの尻尾と耳を見て、ピンときた。

 これはしろぐみの劇遊び用の衣装。彼女は、王子たちを宝箱に案内するネズミ役なので、その衣装を作ってきたのだろう。思い返すと先週の金曜日に「ネズミの衣装を作る材料が欲しい」と言われ、画用紙を渡したものの、まさかもう完成させているとは思いもしなかった。

 まだ、大雑把なストーリーしか話し合っていない劇遊びだが、とても楽しみにしていることが伝わってきた。彩瑛ちゃんは保育者の驚いた様子を見て、嬉しそうに作ったものの説明を始めた。ふくれっ面だったのは照れ隠しだったようだ。

 さて、肝心の劇遊びだが、ホワイトボードにストーリーを絵で描いてあるだけの状態。集まるたびに言葉にしていくのだが、色々な要素が加わり、毎回ストーリーが少しずつ変わっていってしまう。これはこれで面白いのだが、みんなで同じイメージ持つためには、ある程度ストーリーを固めていく必要がある。どうしたものかと考えていた時、この話の紙芝居があればいいのではと思い付いた。

 朝の会で提案すると、「やりたい。」「作りたい。」と賛成多数。しかし、「紙芝居ってどう作るんだ?」と言う質問があったので、園にある紙芝居を二つほど持ってきて比べてみた。すると、色々な共通点に気づく。「数字が書いてある!」「紙芝居の名前が書いてある。」「ここに人の名前が書いてある。」「後ろに字がたくさん。」

 「じゃあ、表紙には紙芝居(劇)の名前を書いて、番号つけて、作った人の名前をつけて、絵を描いて、裏にはお話を字で書けばいいってこと?」と保育者がまとめると、子どもたちが重大な事に気がついた。

 「劇の名前決まってないじゃん!!」

 言われてみればそうである。通称「しろぐみの劇」ではつまらない。せっかくなので、このまま劇の名前を決めたかったが、朝の会が始まってから、この話題で既に15分、飽きてきている子もいるようだったので、一旦朝の会を終わらせ、改めてとり(しろがみ)の子だけに集まってもらい相談した。

 するとなぜか、大喜利のごとく、おかしなタイトルの応酬が始まった。「コニーローズとか?」「ダダンダンとか?」面白い名前を思いついては笑い転げている。言葉の響きだけで面白さを共有できるのは、さすがは年長児のとりさん。笑い転げていても、ただのおふざけに終始せず、ちゃんとした名前も上がってくる。

 「なんとかの冒険ってのは?」
 「冒険っていいな。」
 「王子の名前入れるのは?」
 「いいね。でも王子の名前って決まってない。」
 「王子役やりたい人もいなよ。」
 「パート2ってつけたい。」
 「パート2って2回目って意味だよね。」
 「VSって言葉もあるよ。対決みたいな意味。」
 「VSってかっこいい。言いたい。」
 「スペシャルもいい。」

 日常生活の中でこういう言葉に接する機会があることは想像できるが、その言葉の意味を知っている子がいることには驚いた。

 言葉というものは、仲間内では、すぐに広まっていくもの。劇のタイトルは決まらなかったが、お昼頃には、「パート2!!」と叫びながら走る、あおぞらの男の子たちの姿があった。

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