今まで、絵の具の黒はあえて出さないようにしていた。
 黒は、他の色に混ざると、全てを黒にする、扱いの難しい色。保育者にそのような思いがあったから。

 しかし最近、年長を中心に、「黒はないの?」と聞かれるようになってきた。「黒はなかなか使い方が難しいんだよね。」と答えると、「大丈夫!ちゃんと筆を洗えばいいんでしょう?」と、要領を得ている様子。そこで、要望があれば、黒を出すようにしていた。

 今日も、絵の具ワゴンの準備をしていると、「黒は?」と年長児から聞かれた。「ここにあるよ。」と出すと、それを見た年中児たちが集まってきた。「え?黒あるの?」「綺麗な色!」「使いたい!」
 「綺麗な色」という表現に驚いた。黒って、勝手ながら、暗いイメージがあった。保育者が思っていた以上に、今まで出ていなかった「黒」が登場したのは、新鮮であり、魅力的だったようだ。保育者の固定観念が子どもたちの表現を妨げることになってはいなかっただろうか。

 天気は雨。ホールでは運動遊び、保育室ではそれぞれが興味を持った遊びを楽しんでいたが、絵の具コーナーに子どもたちが殺到したので、年中児と年長児で時間を分けて行うことにした。そして、今日の絵の具遊びは、初めて「黒」に注目が集まったので、このまま黒を出しっぱなしにしてみた。

 年中児には、特に、黒の扱い方を丁寧に、わかりやすく説明しようと意識した。すると、肩透かし。保育者の想像以上によく理解している。「筆を洗えば大丈夫なんでしょう?」と言いながら、黒と他の色を混ぜずに画用紙に塗っている。筆をきちんと洗って、雑巾で水気を取ってから他の色を選んでいる。これは、子どもたちの理解力と、対応力、そして、ここまでの絵の具遊びの経験が合わさっての姿なのだろう。
 知咲ちゃんが、「『黒』は強い色だからね。」と表現していた。「どういうこと?」と聞くと、「だって、黒が勝って他の色を黒にするでしょう?」とのこと。なるほど。周囲の子どもたちも納得の様子だった。

 以前、黒の扱いについて、こいち先生に相談すると、「黒は確かに扱いが難しいけれど、ポイントポイントで使いたい時も出てくるんですよね。要望があったり、慣れてきた時に出してみたらどうでしょうか?」とアドバイスをいただいていた。そして、今がそのタイミングなのかと思う。今日は、黒で夜を表現したり、コントラストに加えている様子がみられた。絵の具の扱い方をみても、これからは常設していて問題はないのではないか。

 それにしても、保育者というものは心配性だなとつくづく思う…。

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