憧れのビッグバン

 突然だが、「爆破ウェディング」という言葉をご存じだろうか。

 新年早々、「特撮のロケ現場で、爆破結婚写真を撮ってきた」という数年前に書かれたブログを、たまたま発見してしまった。「ひぐらし」には、新春にふさわしい内容をと、思案していたはずなのに、ある一枚の写真に、そのことを書かずにはおれないほどの、感動を見出してしまったのである。

 地面からドカーンと四方に粉塵が舞い上がる、戦隊ヒーローものでお馴染みのあの場面。それを背景に、ブーケを手に、ウェディングドレスとタキシードでにこやかに佇む新郎新婦。

 祝事と爆破という取り合わせのギャップに、そのシュールな光景に、そのとぼけた発想に…私はヤられてしまった。

 時代の先を行く皆さんには、もう過去の話題と苦笑されそうな気もするのだが、元々は、爆破シーンをバックに、コスプレ愛好家たちが決めポーズで写真を撮るというサービスなのだそう。

 結婚式らしいこともせずに一年余りを過ごした若い夫婦が、じゃあ、かっこいい結婚写真くらいはと思いついたのが、この「爆破結婚写真」。

 多くのコスプレイヤーたちに混じって、イベント会社が用意したバスに乗り込む二人。特撮ロケ地で有名な採石場跡地へと向かうところから、そのブログは始まるのである。

爆発

 ナンセンスで馬鹿馬鹿しいと言ってしまえばそれまでであるが、粉塵が巻き上がる前で、正装をして真顔で収まる二人の姿に、可笑しさを通り越して、何とも言えない味わいを感じ、心惹かれてしまうのである。恐らくそれを…上質な?センスや感性を感じる、と表現するのかもしれない。いやもはや、ある種の知性すら感じる…そう言っては、少し言い過ぎだろうか。

 この奇妙な感動というは、子どもの、キテレツな発想に出くわした時の驚きと似ている。

 先日、うみぐみ(3歳児)の子どもたちが、2つに分けた自分たちのグループに、それぞれ名前を付けたと聞いた。そのひとつが「くるくるお化け」、もうひとつのグループが、奇しくも「爆発」になったというのだ。

くるくるお化け

 名前らしさなんて微塵も考えない、3歳児ならではの大胆なネーミング。そして、自分たちの考案した名前について、実際はどんなイメージを持っているのだろうかと思った担任たちは、それを絵で表現してもらったというのだ。

 子どもにとっても、私をはじめとした大人たちにとっても、「爆破」という非日常的な光景が、たまらなく魅力的であることに、どうやら間違いはないようだ。

 そういえば、この3歳児たちが、凧づくりに勤しむ場面にも遭遇した。

 その日は、造形作家のこいちさんが関わってくれた日。和紙に滲み絵を施し、それを存分に楽しんだ後に、その紙を凧に仕立てていく。揚げることだけに囚われて、安易にビニールで作ってしまいそうになる昨今。専門性とは、ここにあるのだなと関心をした。

 さて、ロケ地に着いた二人は、待ち時間の間、つらつらと周辺を歩き回っているうちに、その石切場の荒涼とした独特な雰囲気に魅了されていく。そして爆破には、炎上がる「ナパーム爆破」と、粉塵舞う「セメント爆破」があることなども知っていくのだ。

 新しい世界との出会いが、新たな気づきと学びをもたらす事も、うちの3歳児たちと何も変わりがない。

 こんな爆破イベントサービスという仕事があるなんて、想像もしなかった。そしてどうやら、このブログをきっかけに、「爆破ウェディング」で利用する人も増えていったようなのだ。

 仕事や職業とは、もはや選ぶものではなく、創り出していくもの…これからは、そうした力が必要なようだ。

 このイベント会社のホームページを覗いてみると、今は、ひとつひとつのイベント開催の判断に腐心しているようす。

 見渡せばどこも、コロナ禍だ。

(園からの便り「ひぐらし」2022年1月号より)

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