私たちのアート

 今日の造形遊びは作業台作りから始まった。

 覗くと、ちょうど、園にあった板材2枚を繋ぎ合わせようとしているところだった。当然、何が始まるのかとワクワクしている子どもたちが、周りを囲んでいる。電動ドライバーでネジを打ち込んでいる様子を見ると、「私もやりたい!!」という声が飛び交う。子どもの興味に合わせて「じゃぁやってみる?」と声をかけてくれるのがこいち先生。板を切り落とすために使う、のこぎりの作業も子どもたちに任せている。

 このように、子どもたちの目の前で準備したり、その作業にも関わることで、これから始まる活動にも期待感が湧き上がる…そうした意図もあるようだった。

 作業台はいつも使用しているテーブルよりも幅が広いので、模造紙を広げて書くのにちょうどいい。また、園庭に置いてある馬を足にすれば、どこでだって作業ができてしまう優れもの。あるものを使って、即席で作ってしまうこいち先生にはいつも感動する。

 さっそくテラス脇に設置すると、子どもたちが集まってきた。模造紙を作業台に敷くと、「スベスベ〜」「気持ちい〜」と手の平全体で大きく広がった紙の感触を感じていた。

 準備が整うと、以前にも使用した蜜蝋クレヨンを出し、「大きな紙はみんなでお絵描きしていいんだよ。やりたい時にやっていいし、やめたい時にやめていいんだよ。」と自分のペースで描いて良いことを伝えていた。

 すぐにクレヨンを手にすると、形や線を自由に描いていく子どもたち。そこへこいち先生が、「大きい紙だから広く使って描いていいんだよ。ほら、こいっちゃんは手を伸ばすと、ここまで描けるよ!」と描いてみせると、すぐにそれを真似る。ダイナミックに描く面白さに気づいた子どもたちは、手を大きく動かして紙に色をつけていった。

 隼くんや悠翔くんはクレヨンを3、4本を束ねて、紙の上を滑らせていた。何色か塗り重ねている子どもの姿に気づいたこいち先生が、「色を重ねると色が変わるでしょ。」と言葉にして伝えていた。それを聞いた悠翔くんは「見て!オレンジと茶色で赤ができたよ!」と嬉しそうに教えてくれた。

 普段は2階で過ごしている年下の子どもたちも、園庭遊びの合間に、フラッと立ち寄って、一緒にクレヨンを走らせている。これが園庭という場所の利点のようだ。

 クレヨンで塗った模造紙には、ほとんど白い余白はなくなり、色鮮やかな大きな一枚の作品ができ上がった。それを一花ちゃんは「私たちのアートなの。」と表現していた。そんな少し大人びた言葉に、私も感動した。

 紙を新しくし、次は絵の具を用意した。絵の具が揃うと、線を描く子もいたが塗りつぶすように、強く色を擦りつける子もいた。すると、その水気で紙が弱くなってくると、小さな紙のカスがボロッと出て来た。

 こいち先生「同じところを塗り重ねると紙のゴミが出ちゃうね。これが出てくると危ない(破れてしまう)から違う場所に描こう。」

 そして、今日は筆だけではなく、絵の具用に様々な道具を用意してきてくれていた。

 薄くて丈夫なプラスチックの板で、数色を垂らした絵の具を塗り広げると、虹のように広がっていき、とてもキレイだった。伸ばすのには少しコツがいるが、難しいからこそ面白みがある。

 歯ブラシの毛先に絵の具をつけて弾くと、絵の具が飛び散り、細かい無数の点が描かれる。これも少しコツがいるが、これでしかできない表現がクセになる。

 シリコン製のヘラは、プラスチックの板と同じように絵の具が伸びていくが、ヘラがしなるので伸ばしやすい。

 ローラーに染み込んだ絵の具が、転がすだけでどこまでも塗り広がっていく。その動きの面白さもあってか、一番人気だった。

 こいち先生は、道具を出すたびに、使い方を丁寧に教えてくれるのだが、段々とそれが変化していき、歯ブラシを使ってローラーに絵の具をつけたり、歯ブラシの毛先で、直接紙を擦ったり。

 こいち先生は、伝えた通りに道具を使うより、好きに使っていくうちに、ふさわしい使い方に気付いていけばいいということを教えてくれた。まずは自由に描いたり触ったりして、その楽しさを満喫した後に、どうやって描こうかと考えていけば良いというその考え方に感銘を受けた。

 自由に色をつけていくと、水気で破れる箇所が出てきた。こいち先生は「だから言っただろう?」なんて言うことはない。「それならそこは絆創膏を貼って治そう!」と優しく声をかけた。

 絆創膏!?と思いながら待っていると、紙の切れ端を持ってきて、破れた箇所にそれを貼り付けた。「これで元どおり!」傷は隠れ、その上にまた色をつけることができるようになった。

 こうやって何箇所も絆創膏が貼られていったが、これもまた、ひとつのアートになっていったのだった。

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潜望鏡から広がる景色