音と香りと色と

 今日こそはプールに入れるかと思ったが、思うほど太陽が姿を見せない。園庭での水遊びも考えたが、登園人数も少なく、体調が優れない様子もちらほら。それならばと、全員で散歩に出かけることにした。

 園舎裏の階段を降りながら、すぐに愛真ちゃんが気が付く。「セミ(の声)が大きい!」
 階段横の木に居るのか…その姿は見えないのだが、確かにその場所は、セミの大合唱だった。

 愛真ちゃんの発見を裏付けるように、今度はひなたちゃんが、セミの羽があったと見せに来た。芙優ちゃんは抜け殻を見つけた。確かに、付近にはセミが潜んでいるはず。

 そして見つけた、2匹のニイニイゼミ。「先生、セミ居たよ!!」の声に、先頭を歩いていた保育者も興奮気味に引き返して尋ねる。「セミの声は、どんな声?」
 すると、愛真ちゃんがしばらく耳を澄まし、「うーんと…ジー、ジー、…ジリジリジリ!!」と、自信に満ちた声をあげた。愛真ちゃんのそれは正確で、保育者の耳にも「ジリジリジリ」という響きが届いている。
 「ミーン、ミーン」ではないセミの声との出会いがあった。

 遊歩道を歩いていると、雅工くんが「あ、これ、須藤先生たちと見つけた良い匂いのやつだ!」とラベンダーの葉に触れ、指に香りを付けている。
 その傍で、こよちゃんはすっと小さな葉を差し出し、保育者に嗅がせてくれた。この葉もまた、良い香りがする。
 政尋くんは、OKスーパーの横を通りながら「OKの(惣菜の)匂いだー。あ、匂いが変わった!」と、その変化を敏感に捉えていた。
 戸外には様々な香りがあることを、子どもたちは教えてくれる。

 またしばらく進むと、保育者は七色に輝くタマムシを見つけた。この美しさは、絶対に子どもたちに伝えたい。保育者の呼び掛けに、タマムシの周りはあっという間に人だかりとなったが、手に持てたのはリオネルくんだけ。公園までの長い道中も、手の中にはずっとタマムシがいた。
 雅工くんや蒼太くんは、落ち葉の中に赤いものが混ざっていることに気付き、その色の葉だけを集めていく。
 楓真くんは、雨が降り出しそうな空を見つめながら、「なんか、さっきよりも黒くなったね!」と言っていた。
 戸外には様々な色があり、特別な色には、大人も子どもも心が揺れる。

 片道25分の道のりを、様々な音と香りと色に包まれながら、50分掛けて歩いた散歩だった。

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