消えたクラゲ

 保育者が部屋に入ると「あ、飯澤オオカミだ!」と、いつもと変わらぬ柚紀ちゃんの声が響いた。
 車に詳しい政尋くんと蒼太くんは、絵本コーナーから顔を出すなり、「デリカごっこしてたの」と教えてくれた。こよちゃんと空璃ちゃんは、ままごとコーナーから「私たちの場所(コーナー)が一番きれい」と、片付いていることをアピールしている。叶芽くんは、畠山先生の膝の上を独占しながらのパズル。嬉しそうな笑顔が、何とも微笑ましい。
 子どもたちの元気そうな声に、どこかほっとする朝だった。

 子どもたちの体調を確認し、今日はアトリエ前の日陰にビニールプールを2つ出して遊んだ。水着に着替えれば、暑い戸外でも全身で涼がとれる。

 いつものように、玄関からプールバックを取ってくると、保育室の前で「あ、また居る!」とみんなの声。

 子どもたちの視線の先には、金曜日にも見かけた「ゆらゆら」が、今日も天井でゆらゆらしていた。
 「また、ある」でなく、「また、居る」と言う所に子どもらしい感性を感じ、これまた微笑ましくなる。金曜日、雅工くんはそれを『おばけ』と言っていたが、今日の子どもたちは口々に『クラゲ』と言っていた。
 確かに、白い模様が大きく閉じたり開いたりする姿は、まさにクラゲだった。

 ところが、そのクラゲは、愛真ちゃんがたらいの中に入った途端、消えた。そして、たらいから出てしばらくすると、また天井に現れた。
 クラゲの動きに興味のある子どもたちは、天井を見つめ続けている。だから、たらいに友だちが入ったことには気付いていない。
 「あ!いなくなった!!どこ言っちゃったんだろうね…」と言っているうちに、またゆらゆらが天井に現れる。

 プール遊びを終えた後も、保育室に戻ろうとした空璃ちゃんが気付く。「また居るよ。」
 着替えを終えた叶芽くんも、保育者の側に来るなり「クラゲ、さっき、どこ行ってたんだろうねぇー」と呟いた。
 プールの前も、プールの後も、子どもたちの頭はクラゲでいっぱい。

 私たちの前に現れる自然現象や不思議さ、その面白さに、しばらく子どもたちと一緒に浸りたいと思う。

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