セミの抜け殻

 はなぐみの大きな窓から外を眺める子どもたち。「今日は雨降ってないね」と話していると、「お外行こう」「セミの抜け殻探す!」という声が聞こえてきた。

 昨日は雨が降ってしまい、セミの抜け殻探しを中断したことをしっかりと覚えていたのだ。保育者がセミの羽化について描かれている絵本「とくべつなよる」読み始めると、真剣に聞き入る子どもたち。

 セミの抜け殻について、ますます関心が出てきたようで、「早く行こう」「セミの抜け殻見つける」と意欲的な言葉が出てくる。

 早速、園の裏手へ出発!抜け殻を入れるためのビニール袋を握りしめ、心なしかいつもより大股でしっかりとした足取りだ。今日こそはセミの抜け殻を取ってこようという意気込みが感じられる。

 園舎の角を曲がったあたりで、最初の抜け殻を発見した。抜け殻を囲むように集まる子どもたち。ところが誰も触ろうとしない。抜け殻を取り囲むようにして見つめている。

 先ほどの絵本の中で、セミの幼虫が歩いて登っている姿を見たからか、目の前の抜け殻が、まだ生きていると思っているのかもしれない。

 「触ってみたら?」「中に入っているかな?」という保育者の言葉に、そうっと手を伸ばしたり、引っ込めたり。何度か繰り返してようやく手に取ることができた。背中の割れ目から中を覗き込み、「入ってないよ」と友だちに伝えている。

 園の裏門周辺へ行くと、沢山のセミの抜け殻が塀に付いているのを発見し、驚く子どもたち。笑顔で指差し、うわずった声で伝える子もいれば、予想より沢山いたことに驚いて、少し後退りながら見つめる子もいる。

 それでも皆一様に興味津々で、間近で見ようと斜面を登ってくる。

 楽しみにしていたセミの抜け殻が目の前にある。もう少しで触れそうなくらいまで手を伸ばすが、触れそうになると、体を震わせるようにして慌てて手を引っ込める。取りたいのに、なかなか勇気が出ないもどかしさ。

 近くにいる友だちの腕を掴んで、取って欲しいと訴える。頼まれた子も、さっきまで同じように手を出したり引っ込めたりしていたのだが、頼られたことで勇気が湧いたのか、表情が変わった。目に力を込めて抜け殻を見つめると、エイッと引っ張った。案外簡単に、板から抜け殻が外れ、ホッとした表情で友だちのビニール袋の中へと入れる。

 すると何人かの子どもたちが、同じように取ることができるようになると、取った抜け殻を気前よく友だちの袋に入れてあげていた。

 園庭へ戻ると、他のクラスの保育者やにじぐみの子どもたちに、取ってきた抜け殻を披露していた。「すごいね」「沢山あるね」と称賛の言葉を聞き、自信あふれる表情で袋を広げて見せていた。

 取った抜け殻を友だちの袋に入れてあげた子も、交渉をして、それを取ってもらった子も、自分の思いを伝え合って共に目的を達成できた喜びを、みんなに知らせているようだった。

 室内では、出発前に読んだ絵本をもう一度広げて、じっくりと観察する姿があった。外では触るのを怖がっていた子も、テーブルの上に置かれた抜け殻は難なく触ることができていた。まだ木に付いたままの抜け殻には、まだ命を感じるのかもしれない。こうやって自然に触れる体験を大事にしていきたいと思った。

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