水の行方

 いつもは勢いよくプールに入っていく子どもたちが、今日はゆっくりと入っていく。風が強く、普段よりも水が冷たく感じるからだろう。「いつもよりも冷たいね」という保育者の言葉に頷きながら、両手を水に入れ、その温度を感じている。

 保育者が手で水をすくって自分の足やお腹にかけて見せると、子どもたちも同じように水をすくって自分にかける。「気持ちいい」「キャー、冷たい」など、それぞれ感じたことを言葉にして伝え合っている。

 そのうち、子ども同士で水の掛け合いが始まった。ふざけあって、バシャバシャと掛け合ううちに、だんだんと水に慣れていき、いつの間にかプールに座り込んで水を感じながら遊んでいる。

 すっかり水に慣れたところで、保育者が水鉄砲を用意した。先日、子どもたちが水性ペンで色をつけた障子紙のクジラをプール前の柵に貼ったので、これを水鉄砲で撃ってみようかと持ちかけてみた。

 水鉄砲の扱いにも慣れてきて、狙いを定め、指先に力を込めて撃つ。少し前までは、腕がぶれて命中させるのが難しかったが、今はしっかりと腕を固定して撃つことができるようになった。

 クジラに描かれた水性インクが、じわじわと広がっていくと、はっきりとした線は無くなり、ぼんやりとした色彩が重なり合って新しい色を作っていく。水鉄砲を打つ子どもたちは、色が流れ落ちる様子を求めて水をかけることに夢中なのだが、通りかかった保育者が「まあ、綺麗ね」と感嘆の声を上げるのを耳にすると、誇らしげな笑顔で、「そうなんだ」と、あらためて、自分たちが作り出したグラデーションを見つめ直す子どもたちだった。

 発泡スチロールで出来た細長い玩具があり、ホースのように穴がくり抜かれている。片方から水を入れると反対から水が出てくることに気づいた子どもたちは、最近は、熱心に穴に水を入れて遊んでいる。

 だが、ホース全体が傾斜していないと水は出てこない。水を入れると急いで反対側へと向かうのだが、出口が上を向いている事もあるため、水が出てこないこともしばしば。その時は、「なぜ?」という表情を浮かべているが、繰り返し遊ぶうちにその理由を理解し、プールのフチを利用して、ホースに傾斜をつけて遊び始めた。

 水を入れると、そのホースの先から水が出て乾いた床が濡れていく。友だちがやっているのを見て、「僕もやりたい」と一緒に遊び始めるのだが、役割を相談したわけでもないのに、自然と一人がホースを支え、もう一人が水を入れている。

 黙々と遊び続ける子どもたち。ホースに入った水は目の前から消えて見えなくなるが、その中を流れていることを、もうちゃんとわかっていて、出口でそれを待ち受ける姿こそが、実は立派な2歳児であるという証。子どもたちの心の目にはしっかりと見えているのだ。

 水鉄砲の先から勢いよく出てくる水、ホースの中をゆっくりと流れていく水。遊びの中で、様々な水の動きを感じ、経験する子どもたちだった。

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