空気砲

 保育室の片隅に、しぼんだ黄色い風船がひとつ転がっていた。それを手にした子の姿を見て、「風船で遊ぶ?」と声をかけると、「やる!」「風船やりたい!」と、保育室のあちこちから子どもたちが集まってきた。「ちょっと待ってね。」と言いながら風船の入った袋を出す保育者の横で、「ピンクがいい!」「あお!」と声を上げながら、待ちきれないと言わんばかりの表情で、袋の中を覗き込む。

 一人ずつ順番に希望の色を手渡すと、すぐに口もとに持っていき、フーッと息を吹き入れようとする。風船を膨らませ方を知っているようだ。中には、「やって」と保育者に風船を差し出す子もいたが、「やってごらん。」と声をかけ、応援しながら見守ってみることにした。

 リスのように頬を膨らませたり、風船の口を指先で押さえながら盛んに挑戦するが、なかなか大きくならない。大人でも、プクッと膨れる一瞬に力を込める必要があるので、2歳児の子どもたちには難しいのは当然なのだが、予想以上に何度も繰り返す様子に、どうにかして自分で膨らましたいという思いを感じ取れた。

 そこで、保育者が目の前で膨らませて見せると、真剣な眼差しで見つめている。「風船と口をしっかりくっつけて、息が漏れないように吹くといいんだよ」という、少し難しいアドバイスを聞き、自分たちなりに考えながら、また挑戦してみる。

 やはり自分の力では無理だと感じた子から、「先生、やって」と言い出した。そうなることを予想して、用意していた手動ポンプを出すと、「やる!」。

 道具を使えば、子どもの力でも簡単に膨らむ。「自分で」が楽しいのだ。中には赤いポンプを見て、「ケチャップみたい」とイメージしたことを口にする子もいた。一押しするごとに大きくなる風船を嬉しそうに見つめ、納得の大きさになると口を結んでもらう。

 そうした中、一人だけ、今にも割れそうなくらいの大きさになっても、ポンプを押し続ける子がいて、周りの子も保育者もドキドキ。割れるのではと心配していると、突然ポンプから外れた風船は、シュルシュルシュルッと音を立て、回りながら飛んでいった。驚いた表情が一転して笑顔に変わり、それを何度も繰り返していた。

 目に見えない「空気」を、もっと感じられる遊びをしようと、急遽、ペットボトルの空気砲と的を用意した。保育者がやって見せるとすぐに真似をする子どもたちだが、狙いが定まっていないため、的は倒れない。そこで、空気砲の先を子どもの手の平に向けて撃つと、その動きを感じ取り、子どもなりに理屈がわかった様子。「なにが出てくるのかなぁ?」という問いかけに、「空気だよ」「爆弾だよ」とそれぞれの考えを口にして伝え合っていた。確かに、体に当たるとびっくりするほどの風圧がある。爆弾と言いたくなるのもわかる気がする。

 あっという間にコツを掴み、的に向けて撃つようになっていく。子どもの理解力や吸収力に驚きながら、的の種類を増やしていくと、それをどんどんと倒していく子どもたちだった。

 空気を使った遊びを、さらに展開していけたらと思う保育者だった。

 

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