黄色い宝箱

 休み明けの担任と子どもたち。久しぶりにクラスのみんなで集まった。まるで、今日のために溜め込んでいたかのように、夏休みの思い出を一斉に喋り始めた子どもたち。普段の生活の中でも、さんざんおしゃべりしているはずなのだが、あらためてクラスのメンバーで集まると、また違う新鮮さがあるらしい。

 いつもよりは少人数とは思えない賑やかさに、「これこれ!これこそが、しろぐみの朝の会だよね。」と少し懐かしさを感じながら子どもたちの話を聞いていると、夏休み前にクラスで話していた劇の話になった。

 「ねえねえ。あの劇はさ、いつやるのよ。」

 「ああ、劇。しろぐみみんなが集まったらやりたいね。でも、これどんなお話だったっけ?」

 お化け屋敷で遊んだことや、あかぐみの映画にも刺激を受け、劇をやりたいという話が出ていた時、子どもたちが考えたストーリーをホワイトボードに絵で描いておいたのだが、その詳細を、子どもたちはしっかり覚えていた。

 「だから、お姫様の一花ちゃんが悪者に襲われちゃってさ。」

 「そうそう。悪者と、コウモリとお化けとキツネにね。」

 「王子とゴリラと犬と猿とキジが助けに行くんだよね。」

 「海を渡るときは、光義くんのモササウルスに乗るんだ。」

 「ネズミにチーズあげると宝箱の場所教えてくれるんだよね。」

 「宝物の鍵は発明家の柚希ちゃんが作るって言ってた。」

 桃太郎のテイストを残しつつ、子どもたちの興味がある古代生物やお化けなどが登場する一大巨編。実際に劇として演じきれるのかはさておき、今は、ストーリーを共有し、そのイメージを考え合うことが楽しい様子。とりもあおぞらも一緒に、同じ空想を楽しめるようになったことに成長を感じながら、子どもたちの新しいアイデアを絵に描き足して、朝の会を終え解散をした。

 するとすぐに「宝箱作るから段ボールちょうだい。」と戻ってきた玲音くん、日和ちゃん、依千ちゃんの3人組。劇の話に創作意欲が掻き立てられたらしい。せっかくのこの意欲を大事にしたいと、急いで段ボールとガムテープを用意すると、そこから試行錯誤が始まった。

 子どもたちは「絶対に黄色い宝箱にしたい」と言っていた。そこで、まず持ってきたのが色鉛筆。しかし、これでは、濃く塗れないことが分かると、次に持ってきたのが蜜蝋ペン。これは塗りやすかったものの、「それで塗ると、手が汚れるからやめてほしい。」という意見があり断念。

 次に思いついたのはガムテープを貼ること。「塗る」から「貼る」へ方向転換した様子。しかし、これもまた、黄色のガムテープが見つからず、他の色を進めてみるも、やっぱり「嫌だ」と言ってどうにも進まない。

 とうとう諦めるかと思ったとき、日和ちゃんが辺りを見回し、折り紙を見つけた。

 「そうだ!折り紙を貼ればいいんだ。」

 その声に、他の子も顔を見合わせて頷いた。

 「頑張って塗るんだ!」

 「ああ、もう糊がない!」

 「大丈夫。諦めちゃダメだ!あと少し頑張るんだ!」

 まるでどこかを探検しているかのような言葉を交わしながら、最初は黄色い折り紙を貼っていたが、途中から他の色も加えた結果、カラフルなものに仕上がった。あれだけこだわっていた黄色ではないけれど、子どもたちは「できた!」と満足気。

 「黄色じゃなくてよかったの?」

 「うん。。。最初はね、黄色が良かったんだけどね。なんか糊で貼るのが面白くなっちゃって。黄色じゃなくても良くなっちゃった。」

 取り組みながら、次々と新しい面白さを見つけては、その面白さを乗り換えていく子どもたちだった。 

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