怖いと面白いの間

 出勤すると、うみぐみからとりまで、たくさんの子どもたちから声を掛けられた。

 「あ、そういえばね、おじいちゃんちに行ってさ。」「海に行ったよ。」「クワガタのメス捕まえたんだ。」「プールに言って泳いだ!」etc… お盆も過ぎ、今日から久しぶりの登園をする子が多かったこともあり、みんな自分の体験談を聞いてもらいたくて仕方がない。聖徳太子のように10人の話を一度に聞ければ良いのにと思いながら、一人ひとりの話を順番に聞いていく。共感してもらえると、満足して次の遊びに向かっていく姿を見ると、自分の話を聞いてもらいたいという思いは、子ども大人も同じだ。

 プールが始まるまでの時間、園庭であおぞら女子3人組がハンモックで遊んでいた。

 せいびの子どもたちは、このハンモックをブランコのように使っている。押したり、押してもらったり、順番を巡ってケンカしたりと、とにかく賑やか。

 そんな賑やかな声に耳を傾けながら、虫捕りに夢中になっている子どもたちを見守っていたのだが、急にハンモック側の声が聞こえなくなったかと思うと、すぐに「うわー死ぬ!!!」という叫び声が聞こえてきた。何事かと振り向くと、そこには、超高速で回転するハンモックが。

 ロープで吊るされたハンモックは、クルクルとねじって手を離すと、ロープが元に戻ろうとしてすごい勢いで回り出す。みんな、よくそうやって遊んでいるが、今日の場合はそのスピードが違う。よほどねじり上げたのだろう。乗っていた子は、大きな叫び声で、思わず口からこぼれたよだれを拭きながら、「こ、怖かった。」と笑顔で降りてきた。

 様子を見ていると、「もっと早くしたいからもっと巻いて(ねじって)」と注文を出している。ねじる回数と、スピードの関係性がよく分かっているようだが、ねじればねじるほど、ハンモックの位置が高くなっていき、ある程度のところで子どもの背丈ではねじれなくなる。

 そこで、ここはひとつ大人の力を見せてやろうと、加勢しようとすると怒られた。

 「ダメだよ!怖いと面白いの間でやってんだから。」

 「あ、もうちょっと行けるかな。」「そのくらい!そのくらい!」

 怖いと面白いの間とは、うまい表現だ。本当に怖いのはごめんだけれど、かといってスリル感がないとつまらない。そのわずかな隙間を狙っていかないと、挑戦心は湧いてこないのかもしれない。この絶妙な心理の隙間を、保育者としても刺激していきたいものと感じた。

 「よし!ハンモックから勢いをつけてジャンプするなんてどう?」

 「え?それは危ないよ。」

 「そうだね。」

 怖いと面白いの間はなかなか難しい。

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