「ミーンミンミン」「ジージー」。朝から蝉の鳴き声が沢山聞こえてくる。

 詩くんが、蝉の抜け殻を大事そうに持って登園してきた。「おはよう!あ、セミの抜け殻持ってきたの?」という保育者の声を聞いた子どもたちが、「蝉の抜け殻だ」「どこにあったの?」と口にしながら、詩くんの周りを囲むようにして見つめる。「後で外に行ったら、蝉の抜け殻を探してみようか?」と声をかけると、「うん!」「やる!」「木のところにいるよね」と、口々に思いを伝えてきた。友だちが持ってきた抜け殻を見て、一気に子どもたちの興味が蝉に向いたことを感じた。

 外に出る身支度をする子どもたちに、「前に抜け殻を探しに行ったことがあるよね?どこに沢山いたか覚えてる?」と聞いてみると、「あっちだよ!」「横だよ」とすぐに教えてくれる。遊歩道に出る階段の方を指差し、その方角も合っている。どうやらしっかり場所を思えているようだ。

 「蝉もいるかな?探してみようか」という保育者の声に、すぐに図鑑を手にする。春には、図鑑を持って花の名前を調べていた。そうした経験から、図鑑を使えば、蝉のこともわかるのではと考えたのだろう。何冊もある中から、蝉が載っている図鑑を「これだよ!」とすぐに選び取る子どもたちの記憶力に驚いた。

 数人で開いたページを覗き込みながら、「木にいるんだよね」「ここだね」と交わす言葉に、「これから探しに行くぞ!」という強い意気込みが感じ取れた。

 テラスに出ると、出発するまで待ちきれない様子で、蝉の鳴き声が聞こえてくる欅の木をじっと見つめ、どこにいるのかと目を凝らしていた。蝉を見つけると、図鑑を指差し、「これだよ」と得意げに教えてくれる。

 園庭に出ると、欅砦で遊び出した子もいたが、ほとんどの子は門の方へと向かった。以前、抜け殻を見つけた遊歩道に抜ける階段の方に行こうとしていたのだ。保育者の一人が虫取り網を手に、準備はバッチリ。虫除けを塗り、準備完了!門を出て、その場所へと向かった。

 それぞれが、どこかにいないかと、上を向いたり足元に目をやったりしながら進んでいくと、階段横の木の幹に抜け殻と、ちょうどその50センチほど上に蝉がいるのを発見。「いた!」「とって!」虫取り網を持っていた保育者が、「先生捕まえられるかな、応援しててね」と言いながら、網を蝉の方へと伸ばすと、子どもたちは息を呑んで見つめていた。

 網の中に蝉が入ると、「わあ!」「捕まえた!」と口々に言葉と共に拍手が沸いた。網の中で、ジージーと鳴いて羽根をバタバタさせる蝉が、自分たちの目の前に向かってくると、真剣な表情で見つめる。中には、怖いからか後退りする子もいた。

 そんな中、躊躇せずに腕を入れて掴もうとする子が一人。周りは言葉も発せずに静かに見守る。持ち方がわからないため、手こずっているうちに蝉は網から飛び出してしまった。「あー」「逃げちゃった」と言いながらも、なんとなく安心した表情の子どもたち。

 以前、怖くて友だちに抜け殻を採ってもらった子が、「こわい」と言いながらも手を伸ばしてチョンと触ってみたり、ダンゴムシの赤ちゃんを見つけると、友だちや保育者に見せたり、気持ちを言葉で伝える。

 そうこうしているうちに、再び、網が届きそうな場所に蝉を見つけた保育者。子どもたちの視線がまた集まる中、網の中に蝉が入ると、さっき掴もうと試みた子が再び網に手を入れる。今度は、保育者が少し手伝いながら、「ここを持ってごらん」と伝えてみると、動く蝉に少し手惑いながら、なんとか掴むことに成功!その様子に「すごい!」と拍手が起こった。

 すると、「可哀想だから、逃がしてあげよう」と言いながら、パッと手を開くと、飛び立っていく蝉。「ばいばい!」と手を振りながら「おうちに帰ったんだね」という言葉を聞いて、そんな想像力も育っているのだなと感じた。

 満足した様子で園庭に戻り、それぞれが好きな遊びを楽しんだあとは、テラスで水遊び。最後にシャワーを浴びてスッキリとした。

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