怖いけれど

 園庭に下り、ケヤキ砦で遊んでいる子どもたちに「おはよう!」と挨拶をすると、「おはよう!」「見て!登った!!」とケヤキ砦の上から、手を振って応える子どもたち。

 そんな中、ケヤキ砦のトランポリンに立ち、じっと頭上の友だちの姿を見つめる子がいた。「おはよう!登りたいの?」と声を掛けると、「って〜。って〜。(手伝って。)」と手を伸ばして訴える。手助けしたい気持ちをぐっと堪え、「ケヤキ砦は自分で登って遊ぶ場所なんだよ。だからお手伝いはできないんだ。」と伝える。

 そう聞いて、口をすぼませながらどうしようかと考えているその隣を、どんどん上へと登って行く友だち。その姿をじっと見つめながら、悔しさを滲ませていたが、意を決してロープに手を掛けた。

 「お!登ってみる?頑張れ!」と保育者に応援され、不安気な表情が少し緩む。何度も足元を確認しながら慎重に足を上げ、少しずつ登って行く。掛けた腕に力を込める。「大丈夫!もう少しだよ!」と声を掛ける中、遂に登り切った!

 「出来た。」と呟き、先程まで立っていた場所を見下ろすその表情からは、安堵と達成感が感じられた。

 だが、安心したのも束の間。降りるという次なる試練が訪れる。

 「怖い…。怖い…。」と呟きながら足を竦ませ、こちらに助けを求めている。

 「どこから降りるのが一番怖くないかな?」と尋ねながら一緒に悩んでいると、丁度降り始めた友だちが目に入った。「あ!降りるって!どうやって降りているか見てみたら?」と保育者に促され、その様子をじっと観察する。

 そして、同じ場所から降りようと意を決するのだが、やはり「怖い…。」と呟きながら後ずさり。

 ポールから降りようとも試みるが、ここでも地面から足を離すことができず別の方法を探した。

 その後も、友だちが降りる様子を何度も観察して悩んだ末、登ってきた場所から降りることに決めたようだ。

 「こう?こう?」と不安気に保育者の顔を見つめる。「そうだよ。大丈夫。後ろを向いて。少しずつね。」とすぐ後ろで見守っていると、思いの他すんなりと降りることができた。「一人で降りられたね!」と声を掛けると、「できた。」と、本人も少し驚いた様子だった。

 「登っていく子への憧れ」「だけど怖いという葛藤」「上手くいかない悔しさ」「初挑戦の緊張感」「ついに登れた達成感」…様々な思いが、ぎゅっと詰まった数分間だったに違いない。

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廣田先生、ありがとう

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