自分で走りたい

 いつの間にやら朝夕がすっかり秋めいて、涼しく感じるようになってきた。そんな日は、登園したきた子どもたちからテラスへ出て遊んでいる。

 身体の動かし方が上手くなり、思い通りに運動できるようになってきた子どもたち。保育室内の運動コーナーをぐるぐると走り、玩具の棚に登り、飛んだり跳ねたり。「全身を使って遊びたい」という強い欲求を感じる。

 「棚に登ると危ないよ」などどいう保育者の言葉など、全身を動かす喜びで耳に入る訳も無い。気持ちを抑えることより、テラスへ出て思い切り身体を動かして遊ぼうと考えた。

 「車出して」「バイク乗りたい」と倉庫の前に集まって訴える。保育者が順番に手渡していくのを、身体を上下に揺らし、はやる気持ちを抑えながら待っている。こういった些細な場面にも子どもたちの成長を感じる。以前なら、我先にと取り合いになっていたところだが、待っていれば必ず手に入るという見通しと保育者への信頼があるのだろう。

 全員がバイクと車に跨り、勢いよく運転する。バイクや車の方が追いつかずに転倒するほど、力一杯蹴り上げる。なかなかのスピードなので、衝突しないように同じ方向に走るように伝えると、テラスに大きな円を描くように、車やバイクがぐるぐると走り出した。

 バスになったり、パトカーになったりしながら走っている子どもたち。「泥棒を捕まえろ!」という声をきっかけに、保育者を追いかける遊びが始まった。

 初めは車やバイクで追いかけていたのだが、一人、また一人と車やバイクを乗り捨てて、自力で駆け出した。どう頑張っても、自分の足で走るスピードには及ばないことに気づき、こいでいるのがじれったくなったのだろう。いつの間にか全ての乗り物が乗り捨てられ、全員が走って追いかけている。

 手を上下に勢いよく振り、力強く地面を蹴り上げる。手足を連動させ、風を感じながら身体が前へ前へと進んでいくことで、速さも感じることができる。こんな風に思い通りに身体を動かすことができるなんて、子どもたちにとってはどれほど爽快で心地よいことだろう。

 友だちと走り続けているうちに、泥棒を捕まえるという目的は何処へやら、保育者を追い越していく子もいる。ただただ走ることを楽しんでいるのだ。隣には友だちが同じように走っている。そのことも走りたい気持ちを益々盛り上げていく。

 保育者の方は疲れ果てて一休み。子どもたちのパワーに驚かされた朝のひとときだった。

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