絵の具のある生活

 製作コーナーには、描画の道具として、鉛筆、色鉛筆、クレヨン、ペンがある。ここに絵の具を足したら子どもたちの表現はどうなるのだろうか?
 天気のいい日など、園庭に絵の具のコーナーを作ると、子どもたちが殺到する。筆をダイナミックに動かして、着色したり、イメージした形を描いたり、色の混ざりを楽しんだりしている。筆での表現は、鉛筆とはまた違った味わいや世界があるように感じる。

 今年度は、こいち先生による造形活動の機会を増やし、表現遊びをより充実したものにできたらと考えている。そして、テーマが「絵の具のある生活」。絵の具遊びをいかに、園生活の中に取り入れていくのか。

 それに向け、レイアウトや環境を見直した。往来の少ない、囲われた、落ち着ける空間。絵の具や造形遊びの様子が目に見える場所。子どもたちがやってみたいと思える雰囲気作り。そして、絵の具をパッと出し、気軽に使える工夫。
 絵の具は、どうしても準備することが多い。絵の具を色別に出し、ちょうどいい濃度になるよう水を足し、バケツや筆、雑巾を用意し、描いた絵を乾かす場所を確保し…。いざ、やろうとすると、準備を整えるのに労力を要す。

 そうしたことから、どうしても絵の具遊びの機会が限られてしまいがちだったのだが、そこをどうにかしたくて、こいち先生との相談の末に作り上げられたのが、こいち先生特製、「絵の具ワゴン」。瓶に各色の絵の具を入れ、中央に並べておくと、蓋を取るだけで、すぐに絵の具が使える。絵の具が残ってもしばらく取っておける。絵の具は熱を加えて曲げたスプーンで使うだけ取る。パレット、バケツ、筆、雑巾、画用紙も装備。ワゴンは移動可能で、その日の状況に応じた場所で絵の具遊びが可能。

 今日は、限られた時間であったが、ワゴンをテラスに出し、模造紙をテーブルに敷いて絵の具環境を用意してみた。絵の具を瓶に出していると、すぐに子どもたちが集まってきた。そして、「一緒に準備をする!」と、手伝いを買って出た。

 実際にやってみると、いろいろと気がつくことがある。まず、子どもたちは、絵の具のちょうどいい濃度が意外にわからない。絵の具が溶けきらず、気をつけていたつもりが、結局水っぽくなってしまった。そして、瓶からパレットに絵の具を移すのが難しい。パレットに乗せる前に絵の具が溢れる。手が絵の具だらけになり、度々手を洗いに行く子どもたち。そんなことやこんなことも、経験を繰り返すうちに要領がわかっていくだろう。

 早速筆に絵の具をつけ、着色を始める。たまたま、年中あおぞらの子どもばかりが参加していた。もちろん、パレットの使い方もわからない。「使う絵の具の色を変える時は、一度筆を洗うといいよ。」という声かけも、聞こえていたり、いなかったり…。

 そんなことより、とにかく筆を左右に動かして、色をつけるのが面白い!たまたまパレットや紙の上で混ざり合ってできた色が面白い!好きな模様を思い思いに描くのが面白い!面白ければ、なんでもいいのだ。そしてこれも、経験をしながら、やってみたいことや気付きが増えていって、色々なことを試していくのだろうなと、これから先の様子が楽しみになった。

 それにしても、予想していた以上に、ワゴンが溢れた絵の具だらけに。せっせと拭いていると、子どもたちも手伝ってくれた。中央に瓶を並べるための木枠があるのだが、固定されておらず、「こいち先生、ここを留めるのを忘れたのかな?釘でも打っておくか」と思っていた保育者だったが、本日、新たな気付きが!なんと、その木枠が動くことで、ワゴンの絵の具が綺麗に拭き取れるのだ。これは目から鱗。さすが、プロの仕事は違うなと驚いた保育者。専門の方に関わっていただくことで、新たな発見に出会える幸せ。

 そろそろ絵の具遊びを一区切りしようとした頃、ようやく絵の具遊びに気が付いた子たちが集まってきた。年長とりの女の子の様子は、先ほどまでの子たちと少し違う。区分けされたパレットを生かし、筆をこまめに洗いながら、色を作り上げている。年齢や個々によって、「こうしたい」という思いもだいぶ違う。それぞれの表現をのびのびと、安心してできる環境を作っていきたいと感じた。
 給食の時間となり、片付けを促すと、「最後、洗う前にめちゃくちゃに色を混ぜてみる!」と違った遊びになっていた。それもまたワクワクした遊び。

 絵の具との生活は始まったばかり。

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