私…読めるよ

 今日は、しろぐみとあかぐみ合同で朝の会をした後に、園庭に遊びに出た。

 園庭遊びの最中に玄関の前を通りかかると、とりの女の子2人が浮かない表情で座り込んでいた。気になったので、声をかけると、

 美晴「鬼決めでケンカになって、紗英ちゃんがどっかに行っちゃった。」

 帆夏「アメリカじゃんけんしたんだけどね。それが嫌だったみたい。」

 美晴「負けたら勝ちなんだ。」

 最初は、アメリカじゃんけんの意味すら分からず混乱したが、話を聞いていくうちに内容が見えてきた。「帆夏ちゃんは電気鬼で遊びたかった。紗英ちゃんは変わり鬼で遊びたかった。そこで、アメリカじゃんけん(負けた方が勝ち)で決めようとなったが、じゃんけんでは勝ったが、ルール上では負けになった紗英ちゃんが、悲しくなったのか、どこかへ行ってしまった。」ということらしい。

 話をしているうちに、ひょっこり紗英ちゃんが戻ってきた。

 保育者「あ、お帰り。今、ちょうど紗英ちゃんたちの話をしてたんだ。大丈夫?園庭に行ってたの?何か嫌だった?」

 紗英「なんか分かんないけど、あっち行きたくなっちゃった。」

 そういうと、なんとなく気まずい沈黙が続いた。

 私は紗英ちゃんの気持ちが分かる。人間関係で上手くいかなかった時に、私も一回その場を離れたくなる。
 ただ、紗英ちゃんはそのままにせず、戻ってきた。しかし、戻ってきたものの、その後をどうすれば良いのか迷い、他の2人も、どう受け入れれば良いのかを迷っている様子だった。

 そういう私も迷っていた。人間関係において、この時期に他者と上手くいかない経験をすることはとても重要で、この積み重ねが将来の力になるからだ。話の経緯を知らない上に、頼まれてもいないのに、お互いの気持ちを橋渡していいものか。それは子どもたちにとって本当に必要なことなのか…しかし、次第に沈黙に耐えられなくなり、

 保育者「どうしよっか…」

 3人「…(無言)」

 私の余計な一言で、沈黙の時間の気まずさが増した。どうしたものか頭をフル回転させていると、急にお腹がすいてきた。

 保育者「お腹すいた。今日の給食なんだろ?」

 美晴「知らない。」

 帆夏「あそこに書いてあるよ。」

 保育者「見てきてよ。」

 美晴「嫌だよ。だって字読めないもん。」

 紗英「私…読めるよ。」

 保育者「よかった。じゃあ、みんなで行ってきて。」

 紗英ちゃんの「私…読めるよ」には、言うか言わないかものすごく迷った上で、なんとか気持ちを奮い立たせ、緊張しながら発した一言だったと思う。

 戻ってきた子どもたちは「今日の給食、分からなかった!」と3人で笑いながら走り抜けていった。

 紗英ちゃんの言葉をきっかけに、あれだけ重苦しかった雰囲気はどこかに飛んでいったのだった。

 

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