絵の具が日常になるまで

 朝から絵の具遊びの準備をしていると、子どもたちが集まってきた。

 「先生、今日も絵の具をやるの?」「ピンクを使いたい!」「私は水色」「早くやりたいなー。」「こんなにいろいろな色を使えるなんて、ワクワクしちゃう!」
 やはり、絵の具は大人気。テラスにワゴンを出すと、黒山の人だかりだ。

 子どもたちと一緒に準備ができたらと思い、バケツの水を汲んで、テーブルの中央に置いて、と頼んだのだが、「私もやりたい!」「僕もやりたい!」と手伝いが足りない程。そして、絵の具遊びはいつ始まるの?と、ゲートが開くのを待つ競走馬のように鼻息を荒くしている。
 これは、押すな押すなの圧し合いなるだろうことを想定し、学年ごとに時間を区切って絵の具遊びをすることを提案した。とりの子どもたちに待つことをお願いすると、「えー、しょうがないなぁ。」「じゃあ、長い針が何になったらできるの?」と、事態を呑み込んで了承してくれた。順番がくれば後で必ずできる、とイメージできる子が多いと感じる。

 園が目指す絵の具遊びは、「やりたい時に、いつでもできる表現遊び。」ところが、絵の具を出すと、この殺到する状況は、日常に絵の具のある生活までは、まだまだ道のりが遠そうだ。それでも、子どもたちは絵の具遊びに興味津々ということだけははっきりとしている。後は、いかに、絵の具を出す機会を多くしていくか。やればやるだけ、子どもも大人も要領を得ていくだろうし、いつでもできる環境なら、今日を逃すまいと焦ることもない。

 そんな日常をいつの日か…と思う。

 さて、今日は、使用する絵の具の色を増やし、さらに、前回の気付きも取り入れ、個々のペースで表現が楽しめるよう、模造紙ではなく、それぞれが画用紙に描くスタイルをとってみた。そして、パレットや筆、バケツの使い方を使用前に伝えてから絵の具遊びを開始した。

 すると、子どもたちの表現が明らかに変わった。自分の画用紙を前に、リラックスして、時間をかけてじっくりと表現していたのである。今思うと、前回は、目の前の模造紙の空いているところに、とにかく描き込もうとソワソワした感じもあったのかもしれない。自分のペースで、自分のイメージで、好きなものを好きに表現する。この環境が大事なのだなと改めて感じる。
 また、絵の具遊び2回目にして、パレットの区切りを使いこなし、筆を洗ってから違う色を取る子が増えたのにも驚いた。道具の使い方を知ることで、表現の選択肢も増えていくのだろう。

 さらに、今日は、絵の具だけではなく、テーブルにクレヨンも置いてみた。これで子どもたちの表現は、またどう変わるのか?
 あおぞらの子どもたちは、とにかく絵の具に夢中。クレヨンに触れることはなく、絵の具での表現を満喫していたが、とりは違った。細かい人物や模様をクレヨンで描いたり、木の幹をクレヨンで描き、そこに絵の具で葉を繁らせ、はじき絵にして木を表現していたのだ。以前にやったことのあるはじき絵を覚えていたのか。定かではないが、あらゆる道具を適材適所で使う術を身につけることにより、より自分の思い描いた表現がしやすくなっていくのだろうなと感じた。

 絵を描く子は、2枚目、3枚目とどんどん紙を変えて描いていた。描くごとに、色の混ざりや筆の具合を確かめているようだった。描きたいだけ描く中で、学んだり、感じることも多そうだ。
 今日は、絵の具遊びの時間を長めに取ったつもりが、子どもたちから「もう終わり?」「またやりたい!」との声があがった。

 絵の具遊びの終わりには、子どもたちが丁寧にパレットと筆を洗う姿がある。ワゴンやテーブルに溢れた絵の具を拭くのも、また意欲的。絵の具の瓶や筆、ワゴンに関わっていたい。そばにいるとワクワクする。またこれを使って遊びたい。そんな思いが感じ取れる。

 絵の具のある日常は、当たり前でもあり、ワクワクでもあってほしい。

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