砂のついたシャベル

 「お料理するね。」というハールちゃんの一言から始まったままごと。型に砂を入れたり、鍋に入れた砂に水を加えたりと、それぞれが料理を始めた。

 「先生にあげるね。」と言いながら料理をしている子どもたちに、「それじゃあ、ご飯を食べるためのテーブルと椅子を用意してくるね。」と伝え、砂場のそばにテーブルと椅子に見立てたビールケースと傾斜台、ウレタンマットを置いた。

 すると、「お待たせしました!」と運ばれてくる料理の数々。まるで、レストランが開店したようだった。

 「ここはレストラン?なんていうお店なの?」と尋ねると、「ハルジオンのレストラン!」と答えたハールちゃん。「それじゃあ、ハルジオンが飾られているのかな?」と質問すると、「そう!飾る!」と言ってハルジオンを探しに行った。ハルジオンを見つけると、「小さいのは…。」と選んで、カップに入れ、テーブルへと運んだ。

 テーブルに花が飾られたレストランには、にじぐみの子どもたちの姿が。はなぐみの子どもたちが遊んでいるのを見て、興味を持った子どもたちが集まってきて、はなぐみの子どもたちの姿をじっと見つめては真似をして遊んでいる。

 使っていた鍋やシャベルを、にじぐみの子どもたちが使い出したのを見て、一瞬行動が止まったはなぐみの子どもたちであったが、にじぐみの担任が「一緒に遊んでもいい?」と尋ねると、何も言わずに遊びを再開した。初めは、使っていた物を「取られた」と思ったのかも知れない。だが、にじぐみの保育者が声を掛けたことにより、それが「一緒に遊ぶ」に変わったのではないかと感じた。

 数分後、奏介くんがにじぐみの結翔くんが使っているシャベルを指差しながら「それ汚いから!それダメ!」と伝え始めた。シャベルが使いたいのだと思い、「今は結翔くんが使っているから貸してって言うんだよ。結翔くんは砂がついていても良いんだって。」と声を掛けた。それでも「それは汚いの!」と言って結翔くんの持っているシャベルに手を伸ばす奏介くん。

 結翔くんが一瞬シャベルから手を離した瞬間に、すっとシャベルを手にして何処かへ歩いて行った。その後ろを追いかけながら「奏介くん、それ結翔くんが使っていたよ!」と言い掛けて、あることに気がついた。

 奏介くんは水道に向かっている…。そして、先程から何度もシャベルが汚れていると言っていた…。もしかして、洗ってくれようとしているのではないか…。そう感じ、少し見守ってみることにした。

 水道に着くと、やはりシャベルを洗った奏介くん。

 結翔くんの元へと戻ると、結翔くんの側にそっとシャベルを置き、保育者の方を向いて「シャベル汚れていたから、洗ったんだよ!」と言って笑った。

 そんな奏介くんを見て、結翔くんの使っていたシャベルを使いたがって持って行ってしまったと、一瞬でも疑ってしまったことを後悔し、反省した。奏介くんに「シャベルが汚れていたから洗ってくれたんだね。先生、気づいてなくてごめんね。」と伝えると、「いいよ!シャベル洗ったから汚れていないよ!」と言いながら笑い、他の遊びへと向かって行った。

 子どもの行動は、時に保育者の想像を遥かに超える。あらゆる可能性を考え、幾つもの仮説を立てた上で、最善の対応を考えなければならかった。今回のみならず、それは常に心がけていなければならないことだった。また、奏介くんが「それ汚いから!それダメ!」と言いながらシャベルに手を伸ばした時、「どうして?奏介くんはシャベルをどうしたいの?貸して欲しいの?」と尋ねることができていたらと思った。

 子どもの気持ちを汲み取ることは容易ではない。だからこそ、言葉でのコミュニケーションを大切にする必要があるのだと改めて感じた。

 保育者である私たちも、子どもから学ぶことが多く、日々、子どもたちと一緒に成長している。今後も、子どもたちから学び、日々の保育を振り返り、より良い対応を模索して行こうと思う。

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