「つもり」の世界

 今日は、夏野菜の苗をプランターに植えようと計画していた。乳児が生活する2階テラスで野菜を栽培することで、野菜の成長を間近に見て感じられる環境を作りたいという思いから毎年行っている。

 毎日水をやり、少しずつ背が伸びていく様子や、花が咲いた後に、小さい赤ちゃんの野菜ができていく様子等に気づいた時の驚きや喜びは大きく、収穫したものを食べたり、遊びの材料にも使おうと考えている。

 連休中に購入していた苗、午後から雨予報で、明日以降も曇りと雨予報の日が続くため、どうしても今日中に植えてしまいたいと思っていた。午前中は雨が降りませんように…と祈る気持ちで何度も空を見上げた。

 野菜の絵本を一緒に見ていた凛久くんに、「先生ね、今日、みんなとお野菜の苗を植えたいんだけど、凛久くん手伝ってくれる?」と聞いてみると、「うん!いいよ!」とすぐに返事が返ってきた。

 『苗』や『植える』ということを理解しているのかはわからなかったが、普段から、保育者にお手伝いを頼まれると、嬉々として手伝いをする凛久くんなので、『お手伝いをする』という言葉に、すぐに「いいよ!」と返事したのかもしれない。

 絵本にきゅうりが登場したので、今日植えようと思っている野菜の名前を、一足先に凛久くんに伝えてみることにした。

 保「今日、植えようと思っているお野菜はね、きゅうりと、パプリカと、オクラなんだよ」

 凛久「きゅうりとパプリカとオクラ?」

 サラッと3種類の名前を反復できる凛久くんに感心し、「後で、みんなに教えてくれる?」とお願いすると、「いいよ!」とまた気持ちの良い返事が返ってきた。どのくらいの時間、覚えているものなのだろうかと興味も覚えた。

 さて、朝おやつ後、「凛久くん、今日植えるお野菜をみんなに教えてくれる?」と頼むと、みんなの前に立った凛久くんは、「きゅうりと…にんじん!」と教えてくれた。

 惜しい!でもそうだよね、と納得。きゅうりやにんじんは、子どもたちにとって身近な野菜で、パプリカとオクラは名前自体聞き慣れないのかもしれない。こうやって聞いたり見たりして、少しずつ、新たな言葉やモノの名前を知っていくのだろう。

 3種類の野菜名と、園庭で遊んでいる途中で準備ができたら声をかけるので、やりたい人は一緒にやろうね、と伝え、園庭に出た。

 園庭には誰もいなく、虫取り網が数本置き去りになっていた。それを見た途端、駆け寄って手にした子どもたち。背丈よりずっと長い柄を持ち上げ、網を見上げたり、振ってみたりしていたので、「それ、何をするものかわかる?」と尋ねてみた。すると、匡くんが「虫とるんだよ」。お兄ちゃんやお姉ちゃんがいるので、虫取り網を使う姿を見ていたのだろう。

 飛んでいる虫がいないかと見回していると、なんと、風に揺れる鯉のぼりの尻尾に網を振りかざし始めた子が!それを見て、面白そうだと感じたのだろう、一人二人と仲間が増え、あっという間に鯉のぼり捕り大会?のようになった。

 中には、近くにあったケースの上に乗り、捕獲しようとする子もいて、どうやったら上手く捕まえられるかをその子なりに考えて工夫している。しばらく、その遊びは続いていた。みんなでイメージを共有できたからこその楽しさだったように感じる。

 他に動くものがない中、ひらひら泳ぐ鯉のぼりは、子ども達にとって格好の、虫の「つもり」だったのだろうか。「先生!虫、採れたよ!」と一葵くんが差し出した網の先には、葉っぱが一枚と、虫のようにも見える草がついていた。

 子どもたちの「つもり」の世界を、保育者も一緒に思う存分味わっていきたい。

 野菜の苗植えは、2階のテラスで、プランターや土の袋を物置から運び出すところから始まり、土をプランターに入れ、おうち(植える場所)を決め、苗を置き、土をかけ、地面に散らかった土を掃いて、水やりまで。にじぐみの子も混ざり、一つ一つの工程を子どもたちと一緒に行ったが、自分でやりたいという思いが強く感じられた。

 「ダンゴムシに毎日ご飯をあげているし、野菜にもお水を毎日あげなくちゃ。どうかな?」と問いかける保育者に、「やる!」「やりたい!」「うん!」と、大きな声で返事が返ってきた。

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