少し遠い公園へ

 この先の天気を見越して、今日は散歩に行くことにした。ルーレットに託した目的地は小山白山公園だった。散歩で行くには一番距離のある公園だ。

 気合いを入れて出発。長い距離を歩くということは気をつけてほしいことが、いつもより多くある。保育者は要所要所で歩みを止め、子どもたちに向けて話をした。

 「ここからは大事なことを話すからよく聞いて。ここからは車が通る道だから手を繋いで歩くよ。横断歩道もあるからしっかりついてきてね。」

 子どもたちは、保育者の方をじっと見て話を聞いていた。園外に出るということは、時に命に関わることもあることを伝えるためには、保育者の表情や話し方が重要である。気持ちを込めれば込めるほど、子どもたちにその思いが届いていくのだ。

 トンネルに差し掛かった時は、「ここからトンネルに入るけど、トンネルの壁は汚れてるから触ると黒くなるからね。自転車が通るときは端にしっかり寄ってね。でも壁にくっつくと黒くなるからね。」その話がインプットされた子どもたちは、保育者の「前から自転車きてるよー。」の言葉にすぐさま反応し、端に寄っていた。壁に近付きすぎないように目測で距離を測っている子もいた。

 トンネルを抜けると目的地はもうすぐ。公園が見えてくると早く遊びたい思いからか、子どもたちの足取りが軽くなっていた。しかし、公園に着いたからといってすぐに遊び始めて良いわけではない。ここでも気をつけてほしいことを伝えた。

 「他の園の友だちや小さい子もいるからね。小さい子がいる時はどうするんだっけ?」と問いかけた。”こうしてね!これはしないよ!”と伝えるのは簡単だが、段々と、自分で判断できるようになっていって欲しい。すると、すぐさま「譲ってあげる。」と答える子どもたち。

 そうした思いが行動にも表れていた。滑り台の階段を小さい子が登ろうとしている時は、すっと身を引いていたり、その子が滑り降り、滑り台を離れるのを待ってから滑り始めたりしていた。その代わり、せいびの子ども同士で滑る時は団子状態でくっついて滑ることが楽しいようで、それを繰り返し、たくさんの笑い声が聞こえてきた。うまく状況に合わせていることもよく分かる。

 ブランコでは明希くんが順番を待っていた。陽ちゃんがブランコを離れたのを見て、すぐに乗ろうとしていたが、陽ちゃんは、向きを変えるために、ちょっと降りただけのようだ。明希くんは「順番だよ!」と不満そうだったが、保育者は、「どうやったら代わってもらえるか交渉してみて。」と、声をかけた。

 思わず”交渉”という難しい言葉を使ってしまったが、その意図は伝わったようで、少し考えたあとにブランコの上の陽ちゃんの背中をそっと押し始めた。これまでの様々な経験を通して判断した、明希くんなりの選択なのかもしれない。

 たっぷりと遊んだ後の帰り道の足取りは、少し重かったが、小西先生の「マックを食べに行こう!」「ここにポテトが落ちてるぞ!」「帰ったらジュース飲もう!」「これは化石じゃないか!?」などと冗談を聞いているうちに気持ちも紛れ、心も足取りも少し軽くなっていた。

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