恐怖の病の正体

 「先生。朝の会に出たくないんだけど。」

 「今日、お散歩行きたくなんだけど。」

 これは保育者が出勤してからわずか5分の間に掛けられた言葉。

 仕方がないので予定していた散歩を諦めて、その子たちにどんな遊びなら参加したいかを聞き取り、遊んでみることにした。

 「椅子取りゲーム」「ダルマさんの一日(鬼の真似をする)」などの声が上がり実際に遊んでみたが、それでも不満は出てくる。

 それこそが今、しろぐみの中で流行している病「つやや病」だ。「つやや」とは「まんない。りたくない。めたい。」の略。

 病気にかかると、全身のやる気を奪われる。さらに恐ろしいことに、この「つやや病」はとりから始まり、あおぞらへと伝染していく。

 もちろん、子どもたちにも「保育者の力不足」「個別に遊んでいる方が他クラスの好きな子と遊べる」「疲れる」「興味がない」など理由はあるのだと思う。しかし、「つやや」と口で言う割には、最後まで遊ぶと「楽しかった」と終わることが多い謎の病。

 そんなときのことだった。「だるまさんの一日」をして遊んでいるうちに、あおぞらの陽ちゃんが「やめたい」と言い始めた。保育者は「これは、つやや病だ!」と思ったのだが、陽ちゃんの表情には「飽きた」「つまらない」ではなく、「悲しみ」が隠れているのに気付き、どうしたのか尋ねた。

 陽ちゃんは、「参加したかったがルールが分からず、どうしていいのか分からなくなってやめたくなった」と話してくれた。そこで、ルールを説明し直して保育者も一緒に参加すると、陽ちゃんは最後まで遊んでいたのだった。

 陽ちゃんを見ていて、もしかすると「つやや病」の正体は、それに取り組みたくない理由を、うまく言葉で表現できないことなのではないかと思った。だとすると、言葉になっていない部分を拾えれば、子どもたちの「つやや」を「やる気」に変えられるのかもしれない。

 この病に対する戦いは始まったばかり。まだまだ保育者にできることはありそうだ。

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